あ、確率の話か (中国語の声調を推測してみる) その3
懲りもせず第3弾の記事です。前回、xin, cheng, gongという音の声調には偏りがあるというデータを出したのですが、もっと顕著な例もあるよというお話しです。
もう一回前提の話
誤解を招きやすい表現なので、きちんと補足しておいた方が良いと思います。今回の分析のネタ元は、HSK6級の試験要綱に載っている全5000語プラス、自分のこれまでの中国語学習テキスト(北京語言大学出版の教科書が中心)から積み上げた1000語強、両者に重複があるのでそれを取り除いて5800語前後の単語から発音と声調のデータを抽出しています。少なくとも中国で中国語を教えるえらい人たちが考える「中国語でもっとも頻出する単語トップ5000」なので、実際にも中国語の中で頻出する単語と考えても差し支えない(と個人的には)判断しています。
で、それらの単語について、発音と声調の組み合わせの頻度をカウントしたデータについて傾向を見ようというお話しです。ちなみに、これらの単語の中には同じ漢字が複数回登場していますが、それらは重複したままカウントされています。
声調が100%決まる音が35種類もあった
一応偶然を排除するために、発音が3回以上登場するものに限定してみたところ、それでも発音に対して一種類の声調しかないものが35種類もありました。
一例を挙げると、jue, rong, nengはデータの中ではすべて第2声で発音されていて、lie, se, riは第4声でした。一応どんな漢字があるのかというリストもあります。
jue2: 值 决 嚼 掘 绝 觉 (登場回数32回)
rong2: 容 溶 绒 荣 融 (登場回数24回)
lie4: 列 劣 烈 猎 裂 (登場回数20回)
se4: 啬 塞 色 (登場回数18回)
先ほど書いたとおり、同じ漢字が複数回登場しているので登場回数に比べて文字数は少なめです。
全体の2/3の発音は1つの声調が過半数
上の100%は極端だとしても、過半数を占めるものがどのぐらいあるかと計算してみると、全357種類中、241種類の発音、つまり2/3以上の発音は1つの声調が過半数(50.1%以上)を占めていることが分かりました。
我々が特に日本で中国語の発音を習うときは、いろいろな発音を四種類の声調で発声する練習をさせられしますが、このアプローチって、否定はしませんが、実はあまり効率的ではないかも知れないですね。実際には存在しない、またはほとんど使われない発音+声調の組み合わせがかなりの割合で含まれていることになります。
実は、あの声調練習の王様である「ma」の場合でも、頻度で言うと、頻度自体もあまり多くなく、第3声が約50%を占めていて、
しかも出てくる漢字はこれだけ。
ma1: 妈
ma2: 麻
ma3: 码 马
ma4: 骂
発音の頻度という観点で考えた場合は、「ma」で練習するのは実は効率的ではないかも知れないという訳です。繰り返しますが、否定はしませんけどね。
逆に良く散らばってる音はあるの?
さすがに第1声から第4声まで25%ずつキレイに散らばっているものはデータ上見つかりませんでしたが、tanとかtaoなんかは比較的散らばっている方のように見えます。
一応、漢字の方も見ておきましょうか。
tan1: 摊 滩 瘫 贪
tan2: 坛 谈
tan3: 坦 毯
tan4: 叹 探 炭
tao1: 掏 涛 滔
tao2: 桃 淘 逃 陶
tao3: 讨
tao4: 套
そろそろまとめを
こうやってデータをこねくり回してきて分かったのは、発音によって声調の偏りがある事は間違いなくて、それは全体の2/3の音に対して1つの声調が過半数占めている事から分かります。なので、ピンインを忘れたときにヤマを張って出す声調を音ごとに決めておけば、恥をかく確率は統計上は下がるはずです。
とは言いつつ、適度に声調が散らばっている音もあるので、それらについては地道に覚えていくしかなさそう。
・・・要は、こんなデータをいじくり回している暇があるなら、まじめに勉強せいと(笑)。
ということで、最後はこれまでに勉強した(日本で出版されている)中国語参考書です。
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冷静にいくら費やしたか考えると、背筋が凍るので今日はこのぐらいにしておこうと思います。