上昇志向皆無のオジさんがベンチャーに転職する話 その4 逃げたい

キャリア的上昇志向のないオジさんが、何故かこの年齢で外資ベンチャー企業に転職することになった顛末を書くシリーズの第4弾。悩みは日に日に深くなる一方で精神的に追い詰められていく話。

<目次>

二足のわらじ=足かせ

件の "Exciting news" があってから、かれこれ2ヶ月。そろそろ待遇に関する情報が貰えるという時期だったが、相変わらず具体的な情報が降ってこないまま、Go(転職) / Non-go(残留) の決断を下すことが出来ない日々が続いていた。

この時点で自分がやっていた仕事は主に2種類。これから事業譲渡されていく今の専門領域の仕事と、これまでの専門性を活かした他領域の仕事である。この「他領域の仕事」というのは7年ほど前からコツコツ積み上げてきた領域で、少なくとも社内では専門家の地位を確立したと言って良いんだけど、あまり将来的な需要がないかなということで、5年ほど続けた今から2年前に今の専門領域に移る、つまり人事異動することを決めたのだ。

ところが、消えゆくはずの需要が、何故か途絶えることなく細々と発生し続け、気がつけば2年ほど2つの領域を兼業する状態が続くことに。この記事の時点でも二つの領域をちょうど半分ずつこなすという時間配分になっていた。

偉い人に聞いてみた

そんな中、自分の所属部門メンバーが全員参加して、自社の偉い人に話を聞く場が設けられることになった。自分以外に二足のわらじを履いている人はいなかったのだが、思い切って自分の状況を話して、兼業農家はどうすれば良いの?と聞いてみた。

ざっくり言うと、新しい会社に参加して欲しいというメッセージを受け取ったのだが、かといって兼業先の方も大事だから諸々調整して協力体制がどうとかこうとかという何とも煮え切らない答えが返ってきた。

正直、兼業のことを気にしないで、新しい会社で実力を発揮して欲しいぐらいのことを建前でも言ってくれればと、密かに期待していたんだけど。。。

逃げたい

こんな中、予想外のところから、自分自身に変調を来す事態が発生する。自分の中では副業的にやっていた「他領域の仕事」の方で、変にプレッシャーがかかるようになったのだ。別に仕事でミスをしたとか、何か責められるようなことがあったわけでもない。時節柄完全リモートでやってきた仕事の中で、打っても響かない、自分の出したバリューが評価されていない、端的に言うと存在が無視されているような感覚に陥ったのだ。

そんな状態が続くうちに、この「他領域の仕事」に関するメールを見ただけで動悸がしたり、リモート会議に参加するとなると前の晩から眠れなくなり、参加時には「穏便に終わってくれ」と脂汗をかきながらやり過ごそうとするようなってしまった。自分もこの業界長いのだが、このように追い詰められた感覚になったことは過去に一度もない。

これまで、一緒に仕事をやっていてメンタルをやられた人を幾人と見てきたが、メンタルがやられるときって、こんな感じなのかなと思い始めたり、会社から定期的に届く「産業医との相談会のご案内」のメールを見て、相談をしようかなと本気で考えるようになった。不思議と、もうひとつのというか、本職である今の専門領域の仕事では、そのようなプレッシャーを感じることがなく、いつの間にか「○月まで我慢すれば脱出できる」と考えるようになってしまった。

念のため、言っておくが、このメンタルがやられかかった経験が、最終的な決断の理由にはなっていない。今冷静になって思い返すと、いわゆるリモートによる孤独感の問題だと思っている。つまり孤立無援だと思い込んで、自分で自分を追い込んでいたのではないかと。このプレッシャーについては、最終的には乗り越えることが出来、最後には自信を取り戻すことが出来たのだが、この1ヶ月ほどの期間の事を思い返してブログを書いているだけでも、当時のことを思い出してストレスを感じてしまう。

在宅勤務中であっても仕事のことを表に出さないのに、妻が自分の様子を見て心配するほどになってしまったのだが、ふと孤立無援の中、この置かれている状況を関係者に伝えていないのが問題なのではとも思うようになった。ついにカミングアウトする時期が来たのだ。その話は、また改めて。

(つづく)